2022/02/04
ちまたに技術書や学術書が溢れているのはわかっているけど,今さらイチから勉強する時間とかないんです…!という方に向けて心理学の専門家が体系的に「ここが勘所!」を押さえて講義をするセミナーです。
「本なら1冊」「授業なら8コマ」の基本知識を,体系的に(これ重要)ぎゅっと2時間に凝縮した内容にしています。
また,受講者は資料(引用文献リスト付き)・セミナーのアーカイブ動画に加えてオンラインでの無料個別相談会にも参加いただけます(後日・予約制)。個別相談会では,講師への研究相談や添削依頼など,相談枠で対応できる範囲でお答えします。
今回のセミナーは,コンサルティング事業部 研究員の波多野が担当しました(博士:心理学)。専門は認知心理学で,マーケティング企業でのコンサルティング経験もあり,オンライン実験の構築も得意です。この数年間コロナ禍でもオンライン実験を続けている実体験に基づいたわかりやすい講義が好評です。
今回のテーマは「オンライン実験」。心理学実験の仕組みをサーバー上に構築し,世界中の参加者に自宅のPCから参加してもらう取り組みです。
セミナーでは,そもそも実験とは何なのか?という話から,コロナ禍で知見が増えてきたオフライン実験との違いや,気をつけるべきポイントなどを丁寧に説明しました。
通常の心理学実験は,実験室を用意して,あらかじめ約束しておいた参加者に来てもらい,こちらが用意したPCで心理課題をやってもらう…という流れで実施されます。こうした実験室実験は条件統制や参加者への配慮ができるなどのメリットがありますが,やはりそれなりにコストがかかります。また,物理的に実験室に来られる範囲にいる人にしか参加してもらえない,といった制約もあります。
一方,オンラインで完結する実験であればこれまでよりも低いコストで,従来は参加してもらうのが難しかった多様な参加者からデータを取得することができます。
ではこのオンライン実験で得られたデータは,オフライン実験で得られたデータと同様に扱うことができるのでしょうか?
ほとんど同様に扱うことができますが,実験内容や計測したいテーマによっては多少違いがあることもわかっています。こうした精度や妥当性の問題について,先行研究の知見をご紹介しました。特に反応時間の精度や,心理学の古典的な実験(ストループ課題やフランカー課題など)に対する結果の違いについてなどは詳しく検証されています。
実際にメーカーなどの研究部門でオンライン実験を使う場面を想定して,「自社商品の効果を検証する場合」「パッケージのインパクトを調査する場合」「生理指標を測定する場合」それぞれについて,実験準備からデータ考察までのフローをご紹介しました。クラウドソーシングでの支払い方法や,プラットフォームの選び方といった細かい点もまとめられています。
また,よくあるトラブルとその対応についても知っておけば安心です。
とはいえ,オンラインでは,参加者がどのような状況で実験に取り組んでいるかわからないことや,実験の説明が不十分になってしまうリスク,実験中のトラブルへのフォローができないということなどの特性はあります。
より良いデータをとるためにはオフラインでの実験以上に丁寧な事前準備が必要です。セミナーでは下記のポイントごとに,注意点を詳しく説明しました。
ほとんどの実験がオンラインでの実施が可能だとしても,やはりその特性上「そもそもできない」「できるが工夫が必要なもの」があります。それらについての理由や,必要な考え方について専門家としての視点をまとめてご紹介しました。
教科書的にまとまっているわけではないけれども大事な,細かいTIPSもご紹介しました。海外での主要クラウドソーシングサービスAmazon Mechanical Turkでの手数料やサーバー負荷を抑える方法,日本で主流のクラウドワークスを使って参加者スクリーニングを実施する裏技的な方法など…。
研究の強い味方になってくれるオンライン実験ですが,正しく実施するためには綿密な準備と工夫,専門知識が必要です。イデアラボではオンライン実験の構築・実施に関するご相談もお受けしています。オンライン実験に関するご相談はinfo@idealab.co.jpまでお問い合わせください。
イデアラボのセミナーは,月に1回程度不定期で行っています。
今回ご紹介した実験法のセミナーの次回予定は決まり次第イデアラボ公式Twitter(リンクこちら)などでお知らせいたします。
また,イデアラボのコンサルティング契約クライアント企業様には,契約部署の方を対象に無料で開催することができます。
(詳細は担当研究員にご相談ください)
コンサルティング事業部 研究員 博士(心理学)