2022/03/25
今回は,イデアラボの非常勤研究員でもあり,東京大学大学院の特任助教でもある浜名が担当しました。発達心理学を専門とし,子供を対象にしたインタビュー調査なども行っています。アナウンサーのような聞きやすい声と,豊富な授業経験にもとづいたわかりやすい講義が好評です。
今回のテーマは,「インタビュー(心理学の研究では**“面接”**と呼びます)」について。経験談と具体例を交えて話してもらいました。
心理学研究法ではインタビュー形式で調査を行うことを「面接法」と呼びます。
以降,「インタビュー」と「面接」を同義で表記しています
よくある発想として,**「とりあえずアンケートしていろいろ探索的にやってみよ!」**という考え方があります。
しかし,アンケートは,基本的に「多くの人が選ぶのは〇〇」という傾向を推測するためのものです。そしてインタビューは「どんなことを,どんな人が,どんなふうに考えているのか」のバリエーションを調べることに向いています。
つまり,面接(インタビュー)調査は仮説を探索するために行うもので,質問紙(アンケート)調査は仮説を検証するために行うという役割の違いがあります。
また,インタビューでは相手の表情や話し方など,質問紙(アンケート)調査だけではわからない情報が手に入るという違いも大きいです。開発の初期段階でユーザーの実態を調査したり,ある製品に対してどんな仮説があり得るのかを調べる段階で,インタビュー調査が役に立ちます。
面接の方法にもいくつか種類があります。セミナーではそれぞれのメリットやデメリットについて説明がありました。
商品やサービスを開発する目的であれば,一般的には半構造化面接(あらかじめ質問項目だけ決めておいて,面接官がその場の回答や雰囲気である程度自由に会話をする方法)が用いられやすいようです。
よく誤解されることが,**「インタビューは流れに身を任せてたくさん話しを聞けばいい」**というものです。
このような心持ちで面接を行ってしまうと,語りの量はあるけど内容が薄かった…,なんとなく事前に予測できたことしか出てこなかった…といった結果につながってしまいます。
インタビューに必要なのは会話の盛り上がりではなく,その場で話を聞くまでの綿密な準備です。
セミナーでは具体的なステップとそのポイントについて体系的に説明がありました。
まずはRQ(リサーチクエスチョン)を立てることから始めます。今回のインタビューで知りたいことを欲張りすぎずに準備します。
アウトプットの方針,予算,スケジュールなどを検討することについて,浜名さんの経験談から教えてもらいました。
例えば録音や会場の準備であっても,保育園のような騒がしい場所でのインタビューは?子供など発音が明瞭でない場合は?赤ちゃんが泣き始めたら?など様々な場合を想定するのがポイントだそうです。
実際にインタビュー調査がはじまったら,まずは参加者との基本的な信頼関係(ラポール)を築くために天気などの日常的な会話から始めると良いようです。インタビューでは,受容的・共感的に対応すること,面接者が得意な分野の話題から入ることなど細かいポイントについての話がありました。
インタビューの結果をまとめたつもりが,発言内容の文字起こしを集めたもになっていたり,主観すぎるまとめになっていませんか?
インタビューにも分析手法があります。しかも…おそらく皆さんが想像するよりたくさんあります。
どの分析をするとしても,まずはインタビューの逐語録を作るところから始めます。専門業者に委託する方法もありますが,根気強く自分でやる方法も。講師の浜名さんは,インタビューの時には共同研究者に同席してもらって文字起こしをしたり,Okoshiyasu2などの文字起こしソフトを利用したりしているそうです。
まずはたくさんの分析方法が,どういった目的で使われるのかということについて説明がありました。
初心者にも取り組みやすい分析方法。逐語録からキーワードや語りをいくつかのグループに分けて,カテゴリを決定していく手法。評定マニュアルを作成し,第3者が再分析して一致率を確認することが必要です。
データに密着し,データをもとに”概念”を生成する分析方法。
GTAを使うときに陥りがちな失敗というのが,すでにわかっていることを羅列的にまとめただけになってしまう…ということだそうです。
新しくオリジナリティのある知見を示すために,初めにどのような問いを立てるかと,分析テーマと分析焦点を設定することが重要になる,ということでした。
複線経路等至性アプローチという分析方法。ある出来事に対しての気持ちや認識の変化を,時系列的にまとめて図示します。
その他,ナラティブ分析やエスノグラフィといった分析についても説明がありました。各分析について具体的な研究事例を交えながら詳細な説明があり,実際に行う場合の手続きがわかりました。
質疑応答ではこんな質問が出ていました。セミナーの参加者は後日,オンラインで講師に個別相談(30分)をすることも可能です。
技術書や学術書はたくさんあるのはわかっているけど,忙しいし,今さらイチから勉強する時間とかないんです…!という方に向けて心理学の専門家が**「これだけ抑えておけば大丈夫」**を体系的にまとめたセミナーです。
「本なら1冊」「授業なら8コマ」分の基本知識を,ぎゅっと2時間に凝縮した内容にしています。
また,受講者は資料(引用文献リスト付き)・セミナーのアーカイブ動画に加えてオンラインでの無料個別相談を受けられます(後日・予約制)。個別相談では,雑談ベースでの研究相談や添削依頼など,相談枠で対応できる範囲でお答えします。
イデアラボのセミナーは,月に1回程度不定期で行っています。
今回ご紹介した実験法のセミナーの次回予定は決まり次第イデアラボ公式Twitter(リンクこちら)などでお知らせいたします。
また,コンサルティング契約中の企業様には,契約部署の方を対象に同セミナーを無料で開催することができます。
(詳細は担当研究員にご相談ください)
コンサルティング事業部研究員・東京大学 特任助教